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医科との併給・併用が認められないのはあくまで“同一疾病”だ

最近、協会けんぽからの鍼灸療養費の返戻で、「医科との併給・併用の禁止」を理由としたものが極めて多い。鎮痛効果がある薬剤が処方された場合には、「お薬が出ているのですべからく返戻」と有無を言わさずに返戻してくる協会けんぽもみられる。しかし、ちょっと待ってほしい。厚生労働省医療課長通知で示されている併用禁止の文面には、「療養費は、同(・)一(・)疾(・)病(・)にかかる療養の給付(診察・検査及び療養費同意書交付を除く。)との併用は認められないこと」とある。通知では、あくまで「同一疾病」なのだ。保険医療機関での「傷病名」と、保険医から同意を得た「病名」が同一疾病でない場合、医科との併給・併用を議論する必要はない。にもかかわらず、関連疾病だの、事実上の同一疾病だの、訳の分からないことを言って、医師の診断を軽視するも甚だしい事務処理を堂々とやってのけ、返戻を繰り返している。
本来ならば医師の診断に基づく現物給付の疾病と。保険医が鍼灸施術に同意した疾病とが「同一」という限局的運用が行われるべきところを、何でもかんでも返戻すれば、いつかは施術者が諦めるであろうといった乱暴な事務を行っているように思える。繰り返すが、「同一疾病」でなければ、何ら問題は生じないのだ。実際に、「癌」に対する療養の給付において「神経痛」の鍼灸施術が「医科との併用」に当たるとして、協会けんぽが不支給決定した事例がある。これについては、審査請求をして行政に判断していただいたが、前述の現行通知をよく読めば答えは明白である。
「療養費は、同一疾病に係る療養の給付との併用を認めない」としているだけで、この具体的解釈に関して厚労省保険局医療課の歴代担当官は一貫している。すなわち、「鍼灸施術に係る療養費は同一疾病について病院等で療養の給付を受けている場合にあってはその支給は認められていないこと」、「薬剤の給付があった場合は、給付された薬剤日分については療養の給付があったものとみる」である。協会けんぽの考えは薬理的思考を反映したものと思われるが、療養の給付と療養費との併給を認めない当該通知はあくまで「同一疾病」を意識したものであることを忘れてはならない。
一方、マッサージ療養費は病名によらず症例(症状)を支給対象とされている。鍼灸療養費はこれとは明らかに異なる。「同一疾病」が対象であって、「同一症状」は対象ではない。支給対象の疾病ごとに個々で判断することになっているのだ。癌と神経痛を「同一疾病」と見なし、返戻や不支給にすることが誤った通知の解釈に基づく判断であると指摘したい。別疾病にもかかわらず、「同一疾病」ということにして併用禁止を強要する強弁はやめてほしい。

上田孝之
鍼灸柔整新聞 2013年7月25日 第957号 医療は国民のために(133)より転載

 

掲載日/最終更新日 : 2013年7月29日(月)

 

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