医師に照会する動きが出はじめた
柔道整復療養費の支給に関して、患者に「医師の意見を得ることについての同意書」を求める動きが、一部の健保組合に出はじめている。柔整施術と医科の療養の給付との間に「供給関係」があると保険者が認めれば、保険給付の一部又は全部を不支給決定することができる。これは保険者判断で決定できるので、別段被保険者・患者の同意を得る必要はない。にもかかわらず、わざわざ患者に同意を求めるのは、柔整施術受診抑制の一環ではないだろうか。
保険者が療養費支給決定の判断材料として療養の給付を行った医師に意見を求め、柔整施術を受けた負傷と医科の療養の給付が別病名又は別症例であれば、何ら問題はない。しかし、同一病名又は同一症例だった場合は、患者が医師の治療を「了」としなかったから柔整師の施術を受けたと推認できる。すなわち医師の治療では快方に向かわないから整骨院の門を叩いたのだ。そのような治せない医師に意見を聞いてどうするつもりなのだろうか。患者が柔整施術を受けることを選択した「自ら希望する医療を受ける権利」を尊重すべきである。
確かに柔道施術は西洋医療である外科・整形外科の理論を一部取り入れていることから医科の代替機能を有しているといえる。しかし、柔整師と医師の治療方法は同一ではなく、医師が柔整の施術内容をよく理解している訳ではないのだ。仮に医師に柔整施術について意見を求めた場合、医師は困惑するだろうし、そこまでの負担を医師に負荷させる根拠がない。また、回答いかんで療養費が不支給となれば、柔整師と医師との間に無用の疑義が生じる。このようなことは避けなければならず、医師の回答によって柔整療養費の支給を制限するとは、柔整師に対して甚だ失礼ではないか。
一部の健保組合の動きは、柔整療養費を不支給又は不備返戻にするための”方便づくり“を医師に求めるものに過ぎない。
鍼灸柔整新聞2012年10月10日 第938号医療は国民のために(114)より抜粋
掲載日/最終更新日 : 2012年10月17日(水)