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地方分権一括法を盾に国の通知を無視するのは言語道断 「鍼灸柔整新聞」より

 「地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律」は、地方自治法を主とした地方分権関連法規を改正するものだ。本法独自の項目は存在せず、475の法律について一部改正、または廃止が定められている改正法であり、「地方分権一括法」という通称が用いられている。
 地方分権一括法は、地方自治体に対し、地方分権のための法律的保障を与えたものであるといえる。これにより平成12年4月1日以降は、地方自治法50条などの国の包括的な指揮権は廃止され、国の通達等はその性格が「技術的な助言」になった。
 しかし、同法を盾にすべてを保険者(自治体)裁量としてもいいのだろうか。例えば、国が通知(厚生労働省保険局医療課長通知)で鍼灸マッサージ療養費の「医師の同意書」の運用上の取り扱いを定めているにもかかわらす、一部の保険者が独自の判断で返戻している実態があり、これには疑問を感じざるを得ない。
 保険者の言い分は、「地方分権一括法が施行された平成12年4月1日以後に国が発出した通知通達等は単に参考程度にしか過ぎず、鍼灸マッサージに係る療養費の医師の同意書添付の取り扱いを3ヶ月ごとでも6ヶ月ごとでも適宜、保険者の裁量において決めてよいことになった」と、独自裁量を主張するものである。
 地方分権一括法を持ち出して保険局医療課の通知に従わないなどというのは許されるものではない。その証拠に、保険者独自裁量による医師の同意書に関する取り決めに合致していないことを理由に不支給処分にしてみればいい。その処分に不服であるとして、社会保険の場合は地方厚生(支)局の社会保険審査官に審査請求を行えば、行政は厚労省の通知を第一に尊重すると判断し、“保険者の原処分を取り消す”決定が下され、療養費は強制的に支給されることになるだろう。
 同法を論拠とした療養費不払いは、まさに保険者の「詭弁」であり、その不当な対応に対して、施術者側は毅然とした態度で反論していかねばならない。

2011年5月10日 第904号 「医療は国民のために80 上田 孝之」 より転載

 

掲載日/最終更新日 : 2011年5月13日(金)

 

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