免許証偽造事件に伴い行政の対応が変更
上田 孝之
昨年末に柔整免許証の偽造事件が発覚した。実際に被害届が受理されたことから、刑事告発を含め刑事事件に発展することが予想される。これに関して厚生労働省医政局医事課に問い合わせたところ、この偽造事件を受ける形で1月7日付に発出された免許証確認の徹底に関する通知を受け取った。通知は、『あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第9条の2から第9条の4まで及び柔道整復師法第19条の規定による施術所の開設届等の際の資格確認の徹底について』と題しており、医事課長から指定登録機関である東洋療法研修試験財団、柔道整復研修試験財団、都道府県等の衛生担当部局及び関係公益社団法人に向けて発出されていることがわかった。内容に関しては、運転免許証等の原本で本人確認をすることに加え、施術免許証においても原本による確認を要すると記されている。そこで、私の柔道整復師免許証と、知人のはり師、きゅう師免許証の原本をじっくり眺めてみたところ、①桐の紋章のエンボス加工、②氏名の位置に桐の紋章確認、③中央上部の金の桐の紋章、④厚生労働大臣と財団代表理事の公印の押印確認、⑤免許証の縁は菊のデザイン(以上、柔道整復師免許証)、①T.Sをモチーフにしたエンボス加工、②中央上部のT.Sをモチーフにした紋章、③免許証の縁は桐のデザイン、④左下に視覚障害者が各免許証を識別するための凸点目印(以上、あはき免許証)といった特徴のある立派なものであることが確認できた。ただし、免許証が発行された時期、都道府県・行政によるフォーマットの違いで上記の通りでない場合もあるそうだ。
今後、この通知発出を受け、保健所に届け出る際の原本確認は徹底される。これによって、従来は免許証のコピーで可能であった迅速な届け出や申し出の受理は煩雑なものへと追い込まれていくであろう。また、柔整療養費の受領委任の取り扱いに係る申し出等の受理にも影響がでよう。受領委任の取り扱いの申し出も免許証のコピーで認められていることから、今後見直しの対象になるのは必至だ。それに加え、保険取扱いの事務処理にも影響を与えることが考えられる。柔整にとどまらず、鍼灸、マッサージ療養費にも飛び火し、8割方の保険者が受領委任払いに応じている実情を鑑みれば、保健所への届け出・地方厚生局における申し出内容のほか、各保険者によるチェック体制などに対し、免許証原本による照合作業といった再確認を行うケースもあるかもしれない。
東洋療法研修試験財団と柔道整復研修試験財団には、今回の免許証偽造事件を重大事案発生と捉え、行政任せの“ダンマリを決め込む”のではなく、当事者として何らかの対応策を考えてもらいたい。
鍼灸柔整新聞2014年4月10日第974号 「医療は国民のために(150)」より転載
掲載日/最終更新日 : 2014年4月18日(金)