保険者の要望は鍼灸マッサージでの受領委任の協定・契約締結に向けた好機と捉えよ
昨年3月に提出された全国健康保険協会理事長と健康保険組合連合会会長との連名による「療養費改定に関する意見(要請)」は、昨年10月に開かれた第1回あん摩・マッサージ指圧、はり、きゅう療養費検討専門委員会における保険者側の提出資料の中に、図式などで簡潔に整理され、その内容の多くが反映された。その狙いは、療養費適正化の名の下に療養費の支給抑制を意図するものである。
保険者側の基本的なスタンスは柔道整復療養費に対するものと同じであると考えられるが、ちょっと待ってほしい。柔整では受領委任の取り扱いに関する協定・契約で遵守すべきことが定められ、当事者間の了解の上で締結された「約束事」として協定・契約の遵守に取り組まれている。ところが、鍼灸マッサージ療養費にはこれがない。上記の「療養費改定に関する意見(要望)」を実現させるためには、柔整と同様に、協定・契約が存在しなければならない。
例えば、「鍼灸マッサージ療養費に関する不正請求について、国の指導監査体制がないことから整備されたい」とか、「施術録を整備することを義務とされたい」といった意見は、協定・契約に明記した上で周知徹底されるべきことである。協定・契約を設けずに柔整療養費と共通の事項で適正化を図っても、運用上においてその実効は上がらないだろう。やはり協定・契約による強制力が伴わねばならない。また、不正を排除する方策においても、きちんと協定・契約を締結した上で、強制力を有した適正化が求められるものと考える。
協会けんぽや健保連が鍼灸マッサージ療養費にも柔整同様の協定・契約の締結を念頭に置いているのならば、その考えは、長らく鍼灸マッサージ業界が要望してきたものと合致する。療養費の適正化を目指すのであれば、保険者からの要請を協定・契約に正式に盛り込み、鍼灸マッサージ療養費に係る受領委任の取り扱いを実施していくほかに、施術者と保険者双方が歩み寄る手立ては見いだせないのではないだろうか。
鍼灸マッサージ業界としては、今まで以上に受領委任の取り扱いに係る協定・契約が必要であることを声高に主張すべきだ。業界も不正請求を排除する意向は当然ながら持っているはずで、その点においては保険者との意見の方向性は整えられる。また、現在でも8割を超える保険者が「代理受領」や「委任行為」を認め、療養費を施術者や施術者団体に支給しているのが現状だ。保険者側が要望していることを好機到来と捉え、鍼灸マッサージ業界がかねてから要求してきた受領委任の取り扱いに係る協定・契約締結に向けて尽力すべきだ。
鍼灸柔整新聞 2013年2月10日 第946号 医療は国民のために(122) 上田孝之 より転載
掲載日/最終更新日 : 2013年2月19日(火)