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「介護保険における機能訓練指導員として鍼灸師を認めさせる取り組みについて」

上田 孝之

 介護保険法等改正法が6月15日の参院本会議で可決、成立した。今回の法改正のポイントは、何といっても地域包括ケアシステムを推進するという点だ。改正の主な内容は、①医療と介護の連携強化、②介護人材の確保とサービスの質の向上、③高齢者の住まいの整備、④認知症対策の推進、⑤保険者による主体的な取り組みの推進、⑥保険料の上昇緩和、などであった。なお、参院厚生労働委員会は介護保険法等改正法の施行にあたり、7点の付帯決議も全会一致で採択しているが、改正法にも付帯決議にも、鍼灸師に関係するものは一切盛り込まれなかった。
 鍼灸師が介護保険制度の中で活躍できる環境を作っていただきたいとか、機能訓練指導員として認めていただきたいとかの要望を、鍼灸の施術者団体はこの介護保険法等改正の時期に合わせて“次期制度改正に向けた取り組み”と位置づけ、民主党政権の要職にある先生方に陳情を重ねてきた。それにもかかわらず、今回は誠に残念な結果となってしまった。
 10年前の介護保険制度創設に際して、“鍼灸は医療行為そのものであって介護ではない”という考えから、制度参入に向けての足並みがそろわなかったと仄聞している。また、鍼灸師の介護保険参入について、医療業界からは殊更の反対もなかったと記憶している。しかし、今となっては単に機能訓練指導員として認めてほしいという要望さえも、高いハードルとなってしまった。このことは法律改正がなくとも、政省令の改正で対応可能だと思うが、そもそも厚生労働省の担当事務局の素案にも、また、社会保障審議会・介護保険部会の意見書にも全く取り上げられなかった。こうなると、残るは来年の医科の診療報酬改定と同時期実施される介護保険の報酬改定で、何らかのプラス要因を勝ち取れるかどうかだ。
 また、柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師においては、「在宅における介護予防」の観点から新たな取り組みができるような環境を整えなければならない。在宅介護予防を具体的に支援・評価するために、介護保険において私たち東洋医学の国家資格を有する施術者が行える、新たな「介護予防のための在宅加算メニュー」の新設を既に要望している。
 いずれにしても、鍼灸師が介護保険制度の中で活躍できないことは残念なことだ。決してあきらめることなく、政府与党への陳情、厚労省への要望書の提出などを、粘り強く継続するしかない。

鍼灸柔整新聞平成23年7月25日「医療は国民のために85」

 

掲載日/最終更新日 : 2011年8月2日(火)

 

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